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2011/08/14

AndroidでMS-DOSのエミュレータを動かす。

さて、今回は「問題の」Android版Dosboxのお話です。かなりの長文になってしまったので、面倒臭がりな人は、最後の「まとめ」のところだけ読むってのもアリかも。

実は、AndroidのDOSエミュレータはこれまでに幾つか公開されているのですが、その中から今回は、無料の「aDosbox」と、有料の「anDosbox」の2つを紹介します。ぶっちゃけ、それ以外は無視しても大丈夫そうなので。ちなみに、名前が非常に紛らわしいですが、両者の間には何の関係もなく、作者も別。

……と、その前に。上の文章を読んで、「え?Dosboxなのに有料アプリ?」と思った方もいるでしょう。実際、そこが少々悩ましいところなんですが、取り敢えずこの話は置いといて、まずは一番気になるところである、「実際のところ、スマートフォンでどこまで遊べるの?」という話を。

aDosbox (Version 0.2.5)
動作環境:OS 2.2以降、画面解像度 WVGA (480x800)以上、横画面のみ対応
価格:無料

anDosbox (Version 1.1.7)
動作環境:OS 1.6以降
価格:\341(註:ドルでの表示が出来ないため、自分が購入した時の日本円での価格を。レートにより変動すると思われるので、参考程度に)

この2つのDOSエミュレータは、オープンソースで開発が続けられているDosboxというエミュレータを、Androidで動作するように多少の改良を加えたものです。処理速度やハードウェア上の制限から、一部の追加機能が削られてはいるものの、エミュレータとしての基本機能や再現性はオリジナルのDosboxそのままであり、両者には殆んど違いがありません。仮想CD-ROMドライブにもしっかり対応しています。(但し、CD-DA音源の再生には、自分はまだ成功していません)

しかし、両者には「処理速度」「操作系のアレンジ」の2点において、明確な違いがあり、有料の「anDosbox」の方が2点ともに上回っています。これはつまり、「まとも」に遊べるゲームの数に明確な違いがある、という事でもあります。

処理速度の比較

違いを分かり易く説明するために、手元の環境(Infobar A01、CPUは1.4Ghz駆動)で動作させた時のレポートを紹介します。

無料の「aDosbox」では、CPU Cycleを3000、Frame Skipを1の設定でも、サウンドバッファを多めにしておかないと、場面によっては音飛びが発生します。CPU Cycleを5000に上げると、コマ落ちが頻発したり、音飛びしまくったりと、まともに遊ぶにはちょっと辛い感じに。実機で言うと、33MHzのCPUを要求するゲームあたりが、まともに遊べる限界でしょうか。

一方、有料の「anDosbox」は、ソフトウェアキーボード等を非表示にすると、かなり動作が軽くなる仕様となっています。この状態では、CPU Cycleが5000、Frame Skipが0、サウンドバッファ少なめでも、ほぼ問題なし。CPU Cycleが10000、Frame Skipが1で動作させても、時折音飛びが発生するものの、多くの場面では問題ありません。

但し、ソフトウェアキーボード等を表示すると、CPU Cycleが5000でも音飛びが頻発するので、キーボード入力を多用するゲームは、サウンドバッファを多めにするなどの工夫が必要かと。取り敢えず、かなり後期のゲームでもRPGやストラテジー系なら、多少我慢すれば問題なく遊べそうです。

操作系の比較

両方とも、物理キーボードや、自分は所持していないので試せていませんが、bluetooth接続のキーボードやマウスも使えるようです。これらを利用すれば、かなり実機と同じ操作感が再現出来るかと思われます。が、問題なのは、タッチパネルと僅かな物理キーしか備えていない、多くの端末での操作性でしょう。

ソフトウェアキーボード

両方ともに、Android標準のソフトウェアキーボード機能を使っています。そのため好みのキーボードアプリが使えるのは、ちょっと面白いところ。

まず重要な事として、標準で用意されているソフトウェアキーボードでは、ファンクションキーやコントロールキーが入力出来ません。有料の方には、これら特殊キーを入力するためのメニューが用意されていますが、無料の方にはありません。これらの特殊キーが必要なら、anDosboxと同じ作者によるFlit KeyboardFlit Extra Layoutというアプリを両方インストールすると入力出来るので、こちらをどうぞ。(探せば他にもある?)

いずれにせよ、正直なところ、ソフトウェアキーボードでフルキー入力を多用するゲームを遊ぶのは、少々無理がある感じです。無料の方は横画面表示にしか対応しておらず、キーボードで画面の大部分が覆われてしまいます。有料の方は縦画面表示にも対応していますが、ゲーム画面がかなり小さくなるので、この状態でずっと遊ぶのはちょっと厳しいです。会話の時など、一部の場面でのみキーボードを使うのであれば、どうにか実用レベルと言えるでしょうか。

また、通常のソフトウェアキーボードでFPSを遊ぶのは、完全に無理です。指を離した時にキー入力が処理される仕様のため、キーを押しっぱなしの状態を再現出来ないし、複数キーの同時押しにも対応していません。……いやまあ、それ以前の問題という気がしなくもないですが。

マウス

マウス操作の再現は、両者の違いが特に大きい部分です。と言うより、無料の「aDosbox」の方は未完成、或いは未調整の部分が残っていて、やや難あり。

有料の「anDosbox」で特に良いなと思えるのが、普通のタッチパネル対応アプリと全く同じように操作出来る、「Pen mode」を搭載している事。素早く操作出来るし、ドラッグ&ドロップも簡単です。ボタンが小さめのゲームだと、やや狙い辛いのが難点ではあります。

両方で使える操作方式は、ノートPCと同じタッチパッド方式です。つまり、タッチパネル上を指でなぞると、その通りにカーソルが動きます。ゲーム画面上をなぞる事になるので、少々変な感じではあります。無料の方は、クリックをタップで行う事になるので(註:設定で音量調節キーなどに割り当てられる、と書かれてはいますが、何故か機能しない)、設定を工夫してもドラッグ操作などが少々やり辛い感じです。

ゲームパッド(正確には、ゲームキーボード)

無料の方は、専用のソフトウェアパッドを内蔵、有料の方は、内蔵のものはゲームパッドとしては使い辛く、同じ作者がキーボードアプリとして公開しているものを、別途インストールする必要があります(なお、こちらも有料)。両方とも、最大で6つのボタンに、キーボードの任意のキーを割り当てる事が出来ます。上手くカスタマイズすれば、普段フルキー操作の必要が無いゲームならまともに遊べそう。

設定ファイル

設定の変更などに関しては、実は無料版の方がやや勝っています。まず設定ファイルは、有料版が一つしか用意出来ないのに対し、無料版は複数の設定ファイルを使い分ける事が可能。但し、アプリを起動してから利用する設定ファイルを変更した後、アプリの再起動が必要なので、ちょっと面倒ではあります。せめて、自動で再起動してくれたら良いのですが。

また、起動中にCPU CycleやFrame Skipを変更するのも、無料版では専用のメニューが用意されているのに対し、有料版ではオリジナルと同じくキーボードのホットキーを利用するスタイルとなっています。ソフトウェアキーボードだと、かなり面倒。

しかし、Dosboxはバッチファイルの中でも設定の変更が出来るので、ゲーム毎に起動用バッチファイルを用意すれば、個別の設定でゲームを起動する事が出来ます。なので、こうした面倒臭さが実際に問題になる事は、あまり無いでしょう。

ちなみに、マウントするディレクトリやファイルを指定する際には、絶対パスで指定しておくのが無難。また、Androidでは、ディレクトリの区切りがバックスラッシュや円記号ではなく、スラッシュである点にも注意。

注意点

両アプリ共に、起動中に電話に出たり、メールなど他のアプリを起動すると、強制的にリセットが掛かってしまいます。電話だけなら大丈夫かもしれませんが、確実ではありません。これは、Androidの仕様によるもので、アプリの不都合ではありません。(現時点のDosboxでは、対応が困難)

まとめ

無料版は、まだまだ発展途上で、未完成。文句を言うつもりは全くありませんが、更新が遅く、今後の展開も見通せないので、他人に勧めるのはちょっと難しいです。現時点で勧めるなら、どうしても有料のanDosboxの方になってしまいます。

とまれ、やはり物理キーボードを備えない普通の端末だと、操作性の都合でまともに遊べるゲームは限られてきますね。後期のゲームだと、ほぼマウスだけで操作出来るタイトルが多いため、まともに遊べるゲームも多そうですが、処理速度を考慮すると、最低でも1GHz駆動の端末が欲しいかも。

取り敢えず、後期のFPSなど、シビアな操作を要求するゲームを遊ぶのは、諦めた方が良さそう。非リアルタイムなRPGや戦略ゲーム、アドベンチャー等を遊ぶ分には、何ら問題はありませんが。

でもまあ、意外と遊べるタイトルは多そうですね。セーブデータの同期を取れるようにすれば、PCのサブセットとして使えるので、利用範囲はかなり広そう。Dropboxなどのオンラインストレージを利用すれば、出先で同期を取る事も出来ますよ。

最後に:有料版「anDosbox」の、何が問題なのか

まず、誤解の無いよう最初に書いておきますが、anDosboxの作者は、ちゃんとソースコードを希望者に公開しているため、ライセンス上は全く問題ありません。つまり、気持ちとかモラルの問題なわけでして、だからこそ悩ましい。オリジナルDosboxの作者の間でも、意見が分かれているみたいですし。

まず、anDosboxが手抜きで作られたアプリでないのは確か。言うまでもなく、大部分は他人が作ったコードですが、Androidへの最適化に関して、彼らがしっかり仕事をしているのも事実。更新も頻繁に行われているし、アプリ開発者としては素直に信頼が置ける人達だと思います。

ただ、約300円という価格設定がやや微妙なのと、オリジナルの作者に何ら還元が行われていない点が、どうしても引っ掛かってしまうのですね。いやまあ、先程書いたように、完全に気持ちの問題なんですけど。一番重要な部分がオープンソースプロジェクトの流用なだけに、「良い物を作っているんだから、いいじゃないか」で済ませられる話では無いと思います。

散々悩んだ結果として、この有料版に肯定的な立場を取る事に決めましたし、素直にお勧めしますが、オリジナル版の作者のためにも、ちょっとだけ微妙な問題を孕んでいる事も覚えておいてあげて下さい。

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