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2009/09/24

Heroes of Might and Magic III レビュー

改めて読み返してみると、前回の Commander : Europe at War のレビューは、グダグダもいいとこですね。反省。そのうち、改訂版を書きましょう。

気を取り直して。前から紹介しようと思いつつ忘れていた、「Heroes of Might and Magic III Complete」が、少し前に GOG.com で販売開始となりました。というわけで、勢いで紹介しちゃいましょう。

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Heroes of Might and Magic (以下、HoMM と略) シリーズは、超有名なCRPGシリーズ、Might and Magic の外伝作品となる、ターン制のファンタジー・ウォーゲームです。一応、本編とストーリーが繋がっているのですが、ゲーム性は全く別のものだし、本編を完全無視しても問題なく遊べます。(事実、本編と HoMM とでは、ファン層はさほど被っていない様子)

海外には熱狂的なファンが多く、4作目までを製作していた会社が倒産してしまうという大きなトラブルがありましたが、開発会社を変えて、現在でも新作が作られています。公式のアナウンスはされていませんが、どうやら現在、6作目を開発中である様子。(製作会社の人間が、それを仄めかす言動をしています)

シリーズほぼ全ての作品がかなり高い評価を受けていますが、中でも最高傑作の呼び声高いのが、シリーズ3作目に2つの拡張パックを導入したバージョン、つまり今回紹介する Complete 版です。発売されてから10年近く経つのにも関わらず、新作MODがアナウンスされたり、ユーザー作成マップが投稿されていたりと、まだまだ現役で遊ばれています。

この 3作目以降は、作品毎に少しずつコンセプトが違っていて、購入の際には注意が必要だったりしますが、そんな話は取り敢えず置いておいて、今回は HoMM3 だけ紹介します。

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HoMM シリーズは、基本的にはいわゆる国盗り合戦ゲームです。拠点となる都市を発展させつつ、ヒーローユニットとクリーチャーを雇って軍隊を作り、マップ上の鉱山を支配したり、アイテムを集めながら、ライバル陣営の都市をどんどん占領していくのが目的です。戦闘は「シンボルエンカウント方式」を採用しており、マップ上で敵の軍隊やモンスターと接触すると、戦闘モードへ移行するシステムになっています。

システム面で特徴的なのは、「モンスター集団を蹴散らしながらのマップ探索」、「ヒーローユニットの育成」といった CRPG 風の要素が盛り込まれている点です。その一方で、ヒーローユニットは直接戦闘に参加せず、クリーチャーの戦闘能力を補正したり、時折魔法でサポートするのみと、完全に戦略ゲーム寄りのルールになっていて、ユニークです。一作目が発売された時点では、他に似たようなゲームがなく、かなり独自性の高い作品でした。

とは言え、全体的に見れば、HoMM はバリバリの硬派な戦略ゲームです。前述の CRPG 風の要素ですら、あくまで戦略の多彩さ、奥深さを高めるための要素であり、「CRPG の面白さを取り込んだ」という感じではありません。まあ取り敢えず、日本で言う「シミュレーションRPG」とは全くの別物なので、「好きなキャラを好きなように育成する」みたいなのは期待しないように。

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そして、HoMM3 は、戦略ゲームとしての完成度が著しく高いです。その奥深さ、完成度、そして中毒性の高さは、あの「シヴィライゼーション」シリーズに匹敵します。

個々のルールはシンプルで、細かいパラメータの調整を必要としないし、最弱ユニットと最強ユニットの間でパラメータが何十倍も違ってたりするので、多くの方は「何だか大味なゲームっぽいな」という印象を、初見で感じると思います。しかし、その実態はまるっきり逆で、時には相当シビアな判断を迫られる、ストイックなゲームです。大局的な部分から細かい部分まで、気を抜かずにしっかり知恵を絞らなければなりません。

ゲームを動かしているメカニズムも、実際にはかなり複雑で、何をすればどんな結果が出るのかは明確なのですが、その結果が間接的にあちこちへ影響を与えるため、一つの判断を下すためにも、様々な要素を考慮しなければなりません。こういった事を体で覚える頃には、一見大味な数値バランスも、実はかなり綿密に調整されたものである事が分かってきます。とにかく、隙がない。勿論、名作ストラテジーの常として、必勝パターンは存在せず、長期的な見通しと現状を把握した上で、柔軟かつ的確に判断を下す必要があります。

敵 AI は、かなり賢いです。難易度 EASY 設定でも、最初のうちはなかなか勝てないかもしれません。戦略ゲームに慣れていない人にとっては、この難易度の高さが壁になってしまっているのですが、このゲームは特に負けて学ぶ事柄が多いし、一度壁を越えてしまえば、シングルプレイ専門でも飽きる事なく長く遊べるので、これを欠点とすべきかどうかは、微妙。

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ちなみに、久し振りに遊んでみたら、キャンペーンモードの序盤は、案外難易度が低いですね。まずはキャンペーンで、特に戦闘の感覚を身に付けておくと良いでしょう。

ボリュームについても、問題なし。既に大量のユーザー作成マップが出回っていますし、マップエディタで自作に手を出すのも良し。ランダムマップ作成機能もありますが、正直、これは気分転換に使える、くらいに考えておくのが無難かと。ゲームバランス的にはともかく、あまり捻りのないゲーム展開になり易い気がします (まだ、あんまり触ってないけど)。

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……というわけで。流石にグラフィックが古さを感じさせますが (雰囲気は悪くない)、ゲーム内容は今遊んでも相当に面白いです。ゲーム展開が軽快で、サクサクとテンポ良く進むので、一度始めると、なかなか止まらない。中毒性はかなり危険なレベルだと言えます。この内容で約1000円は安過ぎです。

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2009/09/16

Commander : Europe at War レビューの続き

というわけで、「Commander - Europe at War」レビューの続きです。今回は、AI の出来と、機種間の違いなどについて。

AI の出来はどうか

最初にお断りさせていただきますが、AI についての評価は、 PSP 版をプレイした時のものです。PSP 版はプログラムを全て作り直しているので、PC 版とは、ひょっとしたら挙動に違いがあるかも知れません。PC 版のレビューを読む限りでは、全然変わらない気もしますが、念のため。

まあ、とまれ。正直に言って、CEaW の AI は、あんまり賢くないです。戦術レベルでは、結構面白い動きを見せる事もありますが、戦略レベルでの判断が全然ダメ。

例えば、AI が連合国側を担当する場合、北アフリカや中東あたりが、完全に放置されます。特に中東は、このゲームでは特に貴重な油田が幾つかあり、それらを枢軸国から守る事は戦略的に大きな意味がある筈なんですけど……

あと、無事「あしか作戦」を成功させ、グレートブリテン島を完全にドイツ支配下に置いてみたところ、AI はどうもグレートブリテン島の奪回にやっきになっているようで、守りが著しく薄いフランス本土は、完全に放置プレイを食らってました。て言うか、輸送船で陸上ユニットを送り込んで来る気配すら無かったのは、一体……?

戦略的な判断を行わないなら、せめて史実通りの展開を狙うようになっていれば、多少は面白かったのかもしれませんが、残念ながら、それも無し。

残念な事に、AI の賢さを変更するオプションは、このゲームには存在しません。ただ、単純に「歯応えのあるゲーム展開」を望むのなら、ゲーム開始前のオプションで、コンピュータ側陣営に大きなハンデを与える、という選択肢があります。コンピュータ側のハンデを最大にすると、ベテランゲーマーであっても、取り敢えず難易度の面では満足出来るでしょう。ただ、行動が単調なのは変わらないので、あまり何度も繰り返して遊べるわけではありません。

PC 版はともかく、対戦に全く対応していない PSP 版、DS 版で、この AI の出来は、正直言ってちょっと厳しいです。

機種ごとの仕様の違いなど

まず、パソコンで遊べる Windows、Mac OS X 両版と、携帯ゲーム機版との間には、2つの大きな違いがあります。一つは、これまで何度も書いているように、携帯版は対戦に全く対応していない事 (一つの本体を交互に使う形での対戦すら不可)。そしてもう一つは、マップの広さです。

携帯版のマップは、パソコン版のマップと比較して、長さで半分、面積で四分の一になっています。たぶん、メモリ容量の都合でしょう。ユニット生産のコストや移動力などがちゃんと調整されているので、バランスが崩壊しているような事はありませんが、プレイ感覚はやや異なる感じです。

と、バランス面では問題が無いんですが、見た目に問題が。マップの画像を、パソコン版の画像をそのまま縮小して使っているため、ヘックスと地形の画像が一致しておらず、どんな地形なのか分かり辛いヘックスが結構あります。特に困るのが、見た目では陸上のマスなのに、実は海だった、というパターン。

ちなみに、この縮小版マップは、後に Windows 版にも最新パッチにて逆輸入されています。Mac OS X 版には、このアップデートは未だ用意されていない様子。

取り敢えず、携帯ゲーム機版は、AI の出来がイマイチで、対戦不可、細かいバグも多いと、どうにも今一つお勧め出来かねる、というのが正直な感想です。特に PSP 版は、致命的なバグもあるし、明らかに「ハズレ」。


続いて、Windows 版の、イギリス版とアメリカ版の違いについて。このゲームは、イギリスでは Slitherine Software 社から、アメリカでは Matrix Games 社から発売されており、現在ではパッケージを一新した「Gold」版が流通しています。が、両者では、演出面で少しだけ違いがあります。

イギリス版には、アメリカの History チャンネルと契約して提供してもらった当時の映像が、オープニングや敵ユニットを撃破した際などに流れますが (ちなみに、これは携帯ゲーム機版も同様)、アメリカ版では、何故かカットされています。

……えーと、それだけです。ゲーム内容に違いは無いし、イギリス版とアメリカ版で対戦する事も可能。

まとめ

前回と違い、今回は何だか文句が多いですね。改めて読み返してみると。文句ばっかりブーブー言ってるわりには、実は結構気に入って遊んでるんですが。

正直、対戦に興味が無い人にとっては、何度も繰り返し遊べるゲームではないと思います。ルールは良くても、AI がちょっと駄目な感じですので。まあ、ルールが面白いからと、割り切って遊べるなら、さほど問題は無いかも。

逆に、対戦向けには良く出来たゲームだと感じます。単にルールがシンプルなだけではなく、結構マニアックな要素が盛り込まれていて、面白いです。

但し。これ、前回書いたつもりで忘れてたんですが、あまり「二次大戦のシミュレーション」としてどうこう、と考えない方が良いです。リアリティという点では、ルールにも色々と問題が多過ぎです。単純に、ゲームとして展開が面白くなるよう、ルールやバランスが調整されています。

個人的には、ヘックスで構成されたマップ上をチマチマとユニットを動かして攻めていくゲームが久し振りだったし、素直に「シンプルでがっつり遊べる、楽しいゲーム」でした。

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2009/09/12

Commander : Europe at War レビュー

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今回は、改めて Commander Europe at War を紹介しようかと思います。長くなったので、2回に分けて。ゲーム自体は面白いし、Windows や DS なら、例のバグに悩まされずに済むので、何だかんだ言って、お勧めタイトルである事には変わりません。PSP 版以外は。あれから、Windows 版も購入したので、Windows 版のスクリーンショットを交えて紹介します。

まず、最初に。4gamer.net に、Windows 版のデモがアップされているので、気になった方は、取り敢えず実際に遊んでみるのも良いかと思います。時間制限がある代わりに、フルバージョンが遊べます。なお、購入する際の注意点などは次回に書くので、あまり慌てて買わない方が良い、かも。

もう一つ、ついでに。自分はこのゲームのルールが「シンプルだ、シンプルだ」と繰り返し言っていますが、一般的な感覚で見れば、それなりに複雑な部類かと思います。具体的には、「ファイアーエムブレム」とか「ファミコンウォーズ」よりは、それなりに複雑。「アドヴァンスド大戦略」よりは、かなりシンプルです。

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改めて概要から紹介します。CEaW は、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を題材とする、ターン制のウォーゲームです。年代的には1936年から1945年まで、地理的には、ヨーロッパ全体と北米、北アフリカ、中東それぞれの一部をカバーしています。戦争の中でも、戦闘関連に特化した作りになっており、直接戦闘に関わらない政治などの要素については、殆んど何のフォローもされていません。戦争全体を再現するのではなく、大規模な軍事作戦行動を楽しむ事をコンセプトに作られた、という感じです。

国家間の関係は、史実においてはわりと入り組んだものだったのですが、CEaW では「枢軸国」「連合国」「中立国」の3つに単純化されています。プレイヤーは、枢軸側、連合側のどちらかを選び、その陣営の全ての国を操作します。実際には、大国と小国で扱いが違うんですが、細かい話は、今回は割愛させていただきます。

実際のゲームプレイは、戦争全体を上手く運営していく「戦略」要素と、ヘックスで区切られたマップ上でユニットを移動させて、敵ユニットを破壊しつつ進軍する「戦術」要素を合わせ持つ、ハイブリッド型です (つまり、殆どの戦略級ゲームと同じ)。この両者のうち、ルールがより細かく作られているのは、実は戦術レベルの方であり、戦略レベルのルールは、かなり簡素にまとめられています。

例えば、CEaW に登場する資源は「工業生産力」「人的資源」「石油」の3種類しかなく、しかも生産量をコントロールするためにプレイヤーが出来る事は、敵の拠点を占領する事だけです。外交でもプレイヤーに出来る事は殆んどなく、好きなタイミングで中立国や敵陣営の国に宣戦出来るくらいです。(しかも、こちらから宣戦しなくとも、史実とほぼ同じ時期に勝手に参戦してくる)

と書くと、なんだか「戦略ではなく戦術の優劣で勝敗が決まってしまうゲーム」に思えてしまうかもしれません。が、その点はご心配なく。ちゃんと、「細かい部分より、大局の方を優先すべき」というゲーム性になっています。あと、資源の収支バランスが厳しめに設定されている事もあり、戦略レベルでの判断には、結構気を使います。つまり、何だかんだで、ちゃんと「戦略ゲーム」になっています。

……とは言え、やはり「あまりコントロール出来ない」というのがやや難点でして、PC の戦略級ゲームをガンガン遊んできた人は、戦略要素だけだと物足りなく感じてしまうかと思います。

と言うわけで、戦術レベルの話に移ります。既に書いたように、CEaW の戦闘では、ユニットを一つずつ直接操作します。指揮系統のヒエラルキーの概念も無ければ、近接ユニットの支援効果という概念もなく、戦闘は常に1対1で処理されます。その点では、CEaW のルールはかなりシンプルだと言えます。

しかし、その戦闘の処理自体は、様々な要素が絡んだ、凝ったものになっています。特に興味深いものを挙げると、「制圧射撃」(註:殺傷ではなく、反撃させないために動きを封じる事を目的とする射撃) の概念がある、戦車は歩兵より強く地形によるペナルティを受ける、ユニットが弱っている状況で攻撃を受けると自動的に1マス後退する事がある、人的資源が減ってくるとユニットのパラメータが少し下がる、などなど。

勿論、「補給」の概念もきっちり盛り込まれており、戦闘を進める上で重要な意味を持っています。と言うのも、補給が不十分な状況では、戦闘力が落ちるし、失われた兵力の回復も満足に行えなくなるからです。遠征を行う場合、特に海を越えて進出する場合は、補給源 (つまり、敵の都市) を確保する事と、敵ユニットに回り込まれて補給線を切られないよう、注意しながら戦線を前進させていく必要があります。

ルールの中で、個人的に感心したのは、空戦のルールです。爆撃機で地上ユニットを攻撃しようとした場合、敵の戦闘機が近くにあると、その戦闘機が自動的に迎撃しに来ます。しかし、こちらの戦闘機も近くにある場合は、爆撃機の代わりにその戦闘機が敵の戦闘機と戦闘を行います。要するに、いささか簡潔ながらも、ちゃんと制空権の概念が再現されているのです。

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ちなみに、戦闘ユニットの種類は、11種類+司令官ユニットのみと、かなり少なめ。但し、技術開発によりパラメータが成長するし、どのユニットのどのパラメータを重点的に成長させるかはプレイヤーが調整出来るので、ユニットの運営は、さほど単純ではありません。ユニット間の相性、相対的な強さは、ゲームが進行するにつれ、或いはプレイする度に変化します。

……といったところで、今回はここまで。細かい部分は省略していますが、ゲームシステムはこんな感じです。

2回に分けちゃったので、まずゲームシステムについて纏めておくと、シンプルながらにマニアックな要素もきちんと盛り込まれており、良く出来ています。まあ流石に、きっちり細かくルールが作られているのが好きなマニアを満足させられる程ではありませんけど。対戦専用として買うのは有りかも。取り敢えず、マニアックな戦略級ゲームの入門には最適。

あと、このゲームのルールって、実は既存のものが殆んどで、目新しい部分は特にありません。ただ、全体として、CEaW と似たゲームというのは、ここ最近は全く発売されていないんですね。変な話ですが、このゲーム、意外と貴重な存在みたいです。

(9/16追記:続きを書き上げました。)

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