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2009/08/30

Hearts of Iron III はどうか with Paradox 社のゲームはどうか

全世界 (の一部の人達) が待望の、Paradox Interactive 社謹製の超大作、Hearts of Iron III が、遂にリリースされましたね。もう2週間ほど前の話ですが。自分も、ついウッカリ、予約購入してしまいました。わはは。

というわけで、Hearts of Iron III を始めとする Paradox Interactive 社のゲームに興味がある方に、この会社のゲームに手を出す際の注意点を解説しておきます。Paradox 社製ゲームとその熱狂的ファンの間には、かなーり特殊な世界が展開されていますので。

一応、解説しておくと、Hearts of Iron III (以下、HoI3 と略) は、第二次世界大戦を地球まるごと再現してしまおうという、無謀極まりないコンセプトのゲームです。プレイヤーは、軍事関連のみならず、外交、国内政治、スパイ活動、生産、資源管理、技術開発など、戦争に関わるありとあらゆる分野をコントロールします。

このようなモンスターゲームであるにも関わらず、何故か前作の HoI2 は、ヒットしてしまいまして。冒頭で書いたように、ニッチなゲームでありながら、シリーズ最新作を全世界が待望する、という事態になっております。

で、この HoI3 ですが、どうも評価が極端に分かれているようですね。まあ、全くの予想通りでしたが。サイトによって平均点が全然違っており、乱暴に纏めると、コアゲーマーやメディアからは概ね高く評価されている一方で、一般層からはボロクソな評価を受けています。

参考リンク
Game Rankings.com (各メディアの評価)
Gamers Gate (Paradox 社のダウンロード販売サイト)
米国 Amazon.com の HoI3 製品ページ
英国 Amazon.co.uk の HoI3 製品ページ

ボロクソな評価の中で良く挙げられている事項は、「バグだらけ」「AI が全然駄目」「操作系がクソ」「動作が重すぎる」等々。ルールの出来よりも、プログラムとしての完成度に対する苦言が多いのがポイントです。そして、自分で実際に遊んでみた印象やら、掲示板などの書き込みから判断すると、残念な事に、これらは嘘でも誇張でもなく、とてもじゃないけど、「製品版と呼べる完成度」ではありません。

では何故、そんな完成度の低い作品が、コアゲーマーやメディアには高く評価されているのか?彼らは、これだけ大きな欠点から目を背けているだけなのか?……と言うと、特にそういうわけでも無いんですね。自らを「有料ベータテスター」と呼ぶくらいですから。

実は、Paradox 社のゲームが、色々と問題を抱えた状態のまま出荷されてしまっているのは、今に始まった事ではありません。過去に発売されたゲーム全部が、そうでした。一般的な感覚で「製品版」レベルの完成度になるのは、発売されて1年後くらい、目安としては最初の拡張パックを導入後、と言われています。

その一方で、Paradox 社は発売後何年にもわたって、精力的にゲームの改良を続けている事でも有名です。一つのパッチによる変更点は膨大な数におよび、単なる不都合の解消のみならず、細かなルールの改訂も行われています。それに加え、ここ最近のタイトルでは、「拡張パック」という形で大掛かりなルールの改変が行われるようになっており、最終的には、そこらのゲームを軽く凌駕する程にまで成長します。要するに、発売されてからの進化の度合いが凄まじいのが、Paradox 社製タイトルの特徴なのです。

つまるところ、それでも Paradox 社のファンを続けている連中というのは、長所と短所を天秤にかけて、「まあ、過程はどうあれ、最終的には素晴しいモノが出来るんだからいいや」と思える人達なのです。

あと、会社の規模が小さい事も考慮して、容認しているんじゃないか、とも思います。はっきり言って、Paradox 社の規模は「零細」です。クレジットを確認すると、HoI3 のプログラマは6人。この6人で、プログラミングからデータ作成までを行っています。更に、彼らは HoI3 の専属ではなく、この6人で全てのタイトルを手掛けています。

勿論、「そんなのは言い訳にはならない」というのは正論だし、至極真っ当な感覚の意見です。しかし、その是非はともかく、Paradox 社界隈では、その常識は通用しません。Paradox 社作品の評価を読む際には、このへんの事情を考慮しないと、痛い目を見るかもしれません。

とまれ。Paradox 社作品の未経験者が、新作タイトルに飛び付くのは、全くお勧め出来ません。最低でも、最初の拡張パックが発売されてから、ですかね。最近では、拡張パックが2つほど発売される頃に、大幅な値下げを行うのが通例となって来ているので、それを待つのも手です。

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2009/08/26

Matrix Games 社のご案内

今回は、前回バグを紹介した「Commander - Europe at War」の、バグ以外の紹介を書こうかと思ったのですが、ちょっと煮詰まっちゃったので、コンピュータウォーゲームを中心に扱う Matrix Games 社を紹介します。「この手のゲームは好きなんだけど、どうも肌に合うゲームが見付からないなぁ」と感じている人は、試してみる価値がありますよ。


Matrix Games 社のサイト


Matrix Games 社は、米国のコンピュータゲーム「パブリッシャ」です。昔のエニックス社と同様に、社内ではゲームの企画開発を行っておらず、製造、販売やユーザーサポート、そして品質管理など、規模の小さい会社が特に苦手とする分野をサポートする事に、専念している会社です。

それに加えて、もう一つ。Matrix Games 社は、プログラマやグラフィッカー、サウンドデザイナーも数名抱えており、開発の手助けもしています。

こういった手厚いサポートから、開発会社から高く信頼されているようでして、老舗の開発会社や、ベテランのゲームデザイナーが、この会社と契約して作品をリリースしています。他のパブリッシャから鞍替えして来た例も、幾つかあります。その一方で、ベテランに負けじと新興勢力も頑張っているようで、なかなかいい塩梅に事が回っている印象です。

何と言うか、Matrix Games 社からは、「コンピュータ ウォーゲームの火を消してはイカンのだ!!」という、並々ならぬ情熱が感じられます。火を消さないどころか、火を点けて回るくらいの。あまり一般層へのアピールは行っていませんが、ここ最近の北米ゲーム事情から判断すると、それが正解でしょう。本質的にマニアックな市場を、無理に広げようとしても、ロクな事がありません。

既に書いているように、Matrix Games 社が扱うゲームは、殆んどが戦争や戦闘に関連したゲームですが、その範囲内で、かなりバラエティ豊かなラインナップであると言えます。題材となる戦争や時代の違い (二次大戦や一次大戦、ナポレオンの戦争など)、再現する戦争の規模の違い、リアルタイムかターン制かの違い、などなど。

細かいところでは、同じ二次大戦でも、海戦専門のもの、陸戦専門のもの、などという違いもあります。「ルールの複雑さ」という点でも、シンプルなものから強烈に複雑なものまで、幅広く揃っています。

マニアにとっては、こういう細かい違いであっても、大きな意味を持つものであるわけです。さすがに、この辺の事情は良く分かっているようで、ゲームの紹介ページでは、細かいゲームの特徴が、分かり易くリスト表示されています。かなり便利。

また、いわゆる「戦略ゲーム」以外にも、二次大戦時代の「コンバット・フライトシミュレータ」なども、幾つか発売されています。広い意味でのウォーゲーム……と言って良いのかしら?(それ言ったらコールオブデューティとかも……)

Matrix Games 社の販売形態は、ダウンロード販売が中心となっています。ダウンロード販売は、購入後、15日間しかダウンロード出来ず、オプション料金で二年間のダウンロードをサポートする、という方式。正直、Steam や Gamers Gate などと比べると、少々使い辛い感じです。

全てのタイトルは、$10 プラスすれば、パッケージ版として購入する事も可能ですが、このパッケージ版は、完全に受注生産で、どちらかと言うと、「CD-R への焼き込みと、フルカラーでのラベルとパッケージ (DVD用ケースに差し込む紙)の製作を代行します」サービス、といった感じです。印刷自体は、なかなか高品質です。紙製の説明書は、必ずしも付属しているとは限らないので、説明書が狙いの場合は、注意が必要です。

オンラインストアで「Digital Express」と書かれているものは、紙製の説明書が付属しません。それ以外の、「Standard Edition」には白黒の説明書が、「Deluxe Edition」にはフルカラーの説明書が付属します。なお、各 Edition の違いは、紙製説明書の違いだけ、だそうです。

正直に言うと、個人的には、パッケージ販売するなら、是非とも紙製の説明書が欲しいですね。ウォーゲームって、特にルールをじっくり読んで理解したいタイプのゲームだし。ただ、ニッチなゲーム専門で上手に立ち回ろうとすると、仕方のない部分ではあります。事情が分かるので怒りはしませんが、やっぱ残念。

まあ、そんなわけで。「大戦略」シリーズに物足りないとか、ゲームシステムがなっちょらん! とお怒りの方々は、Matrix Games 社から発売されているゲームを試してみる価値が、大いにあります。マニアックなこだわりが光る作品が殆んどだし。

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2009/08/15

PSP 版「Military History : Commander -Europe at War」

せっかく PSP を購入したんだから、PSP で本格派ウォーゲームを持ち運びたいよね。

というわけで、欧州で発売されている、「Military History : Commander - Europe at War (CEaW)」というゲームを勢いだけで買ってみたら、意外にも面白いゲームでした。せっかくだから、皆さんにも紹介しようと思います。

……などと喜んでいたのも、さっきまでの話。残念ながら、PSP 版には、わりと致命的なバグが存在する事が分かってしまいました。

話を進める前に、簡単にだけ、どんなゲームか説明しておきます。「Military History : Commander - Europe at War」は、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を題材とする戦略級ウォーゲームで、Windows からの移植です。DS と Mac OS X でも発売されています。なお、PSP と DS は、現時点では欧州のみで発売されています。北米での発売予定もあるみたい。

戦闘関連に絞った作りになっていて、基本的には、軍事ユニットを上手く動かして、どんどん敵の領土を切り取っていくのが目的です。「大戦略」なんかと似てるのは似てるんですが、戦闘ルールが、シンプルながらもよりリアルなもので、制空権の概念が簡単ながらしっかり再現されていたり、戦略レベルで遊べる事が多かったりと、シンプルなくせに、マニアがニヤッと出来る部分が意外と多いゲームです。なんか、変に出来が良い。

購入直後から、アイコンの順番が入れ替わっているとか、隠されているべき情報が見えちゃったりとか、プレイに支障はなくとも恥かしいバグが結構多いな、とは思っていたんですが、かなり面白いゲームなので、気にしてませんでした。まさかプレイ続行が不可能になるバグがあるとは……。

このゲームは、航空機や戦車が行動する際に石油を消費するのですが、この備蓄が一定量を下回ると、「石油が少なくなりました」というメッセージが画面に出ます。このメッセージが出ると、アウトです。絶対にフリーズします。なんかもう、完璧に駄目です。

問題は、枢軸国側でプレイすると、このメッセージと出会う可能性が非常に高いこと。史実において、枢軸国は石油の確保に頭を悩ませていたわけですが、このゲームでも、その状況が誇張されて再現されており、当初からの備蓄をガンガン消費しながら戦っている状態です。調子に乗っていると、ゲーム中盤で枯渇するくらいの勢いで。それでいて、油田を確保出来るのは、どうしてもゲーム中盤頃になってしまいます。なので、このメッセージを出さないように作戦行動を続けるというのは、かなり無理があります。

不幸中の幸いと言えるのは、この「石油消費」の概念が選択ルールだという事です。石油消費をオフにすれば、ちゃんと最後まで遊べます。ただ、枢軸国側が結構有利になっちゃうので、オプションでハンデを設定するなど、面白く遊ぶには工夫が必要ですが。

また、連合国側で遊ぶ分には、事実上、このバグは問題となりません。連合国は最初から豊富な石油生産量を確保しているので、石油が不足する可能性が、かなり低いです。

でもまあ、このバグを回避する最も良い方法は、PSP 版を買わない事でしょうね。持ち運びするなら、DS 版。個人的には、DS 版はマップ表示が狭いので、ちょっと遊びにくい気がするんですが。

ちなみに、PSP、DS 共に、マルチプレイに非対応という大きな欠点があるので、持ち運びさほど興味がないなら、パソコン版を買うのが無難です。

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